2017年05月23日

秋吉 2007

秋吉貴雄『公共政策の変容と政策科学──日米航空輸送産業における2つの規制改革』(有斐閣、2007年)。

本書は、公共政策の変容を説明する分析枠組みを提示した博士論文(一橋大学提出)の加筆修正版です。著者が強調するのは、「どのような政策内容に、どのように変容したか」を説明するためには「利害」(Interests)や「制度」(Institutions)だけでなく「アイディア」(Ideas)を視野に収めなければならない、ということです。そのうえで、相互に関連するこれら3つの I 、そして「政策学習」等の概念を踏まえつつ、公共政策が変容する過程を、@政策パラダイムの転換、A政策アイディアの構築、B政策アイディアの制度化という3つの段階に分けて説明する枠組みを提示しています(☞57頁)。本書の大半は、この分析枠組みに依拠した事例研究に充てられています。すなわち、「自由競争」という政策アイディアを採用し航空輸送産業の「抜本的な」規制改革を達成したアメリカと、「管理された競争」という政策アイディアを採用し「限定的な」規制改革にとどまった日本という比較研究がそれです。分量的にはこの事例研究のほうが多いのですが、分析枠組みの提示が〈主〉であり、事例研究は〈従〉であると受けとめました。そうであるとすれば、海外の日本研究者が読む必要はないのかもしれませんが、日本の政治学における動向の一つとして把握しておいたほうがよさそうです(ちなみに、本書は日本公共政策学会奨励賞などを受賞しています)。私にとっては、政治改革の政治過程を描く際に、この分析枠組みにかなりの程度依拠することができそうです。その後、@この分析枠組みが学界でどれくらい受容されたのか、Aこの分析枠組みがどれくらい発展したのか、知りたいところです。(研究室:政治技術論)
posted by OKAZAKI, Seiki at 16:24| Comment(0) | Aliaj Temoj

2017年05月20日

伊都ごもり

九州大学政治研究会で「グローバル化とは何か──ルーヴェン遊学を振り返って」という報告をしました。こうした「ホームの」研究会があることは、実にありがたいことです。それはさておき、来週以降の諸々の学会には、すべて参加しないつもりです。学界と距離を置いたほうが、パラダイムに囚われない論文を書きやすくなるし、余計な配慮をすることなく書評ブログを書きやすくなる、と判断しているからです。お叱りをうけるかもしれませんし、私も少し寂しい気はするのですが、そういう理由ですので、ご理解いただければ幸いです。もちろん、メールでのコンタクトは歓迎しますし(携帯電話は解約しました)、福岡であればお会いすることも可能です。
posted by OKAZAKI, Seiki at 23:02| Comment(0) | Noto

2017年05月17日

三谷 2017

三谷太一郎『日本の近代とは何であったか──問題史的考察』(岩波書店[岩波新書]、2017年)。

本書は、日本政治外交史を専攻する三谷太一郎氏(日本学士院会員・東京大学名誉教授)が「日本の近代」を総論的に論じようとした意欲作です(ただし「ふりかえって、総論的なものに目標を設定しながら、結果としては各論的なものを脱することができなかったことを反省しています」(269頁)とも述べられています)。本書では、次の4つの問いを軸に「日本の近代」が論じられています。
 第1章:なぜ日本に政党政治が成立したのか
 第2章:なぜ日本に資本主義が形成されたのか
 第3章:日本はなぜ、いかにして植民地帝国となったのか
 第4章:日本の近代にとって天皇制とは何であったか
本書はおおむね好意的に迎えられているようです。私も、多くの歴史的事実を学ぶことができました。しかしその一方で、本書をどのように受け止めればよいのか、戸惑っていることも否定できません。思うに、その最大の原因は<問いの立て方>ににあるのではないでしょうか。本書全体の問いは「日本の近代とは何であったか」です。「何」(what)を問うているわけです。ところが、同じ問いを発しているのは第4章だけであり、それ以外の3つの章は「なぜ」(why)や「いかにして」(how)という問いを立てています。why や how という問いに答えたとしても what に答えることはできないのではないでしょうか。「結果としては各論的なものを脱することができなかった」とすれば、おそらくこの点に起因するのだろうと思います。
 好意的な書評が多いため、あえて疑問点を記しましたが、本書が一読に値する意欲作であることは間違いなさそうです。日本政治外交史を専攻する研究者がこの意欲作をどのように評価するのか、知りたいところです。(2018年に KU Leuven に寄贈予定。17時20分、一部修正。)
posted by OKAZAKI, Seiki at 12:18| Comment(0) | Aliaj Temoj